しきたりとなったN・Mの疑心暗鬼とちゃぶ台での一悶着

それにしてもちっちゃなグローブだった。あまりにも手狭だったので、途中からは玄人っぽく人差し指を出して使ってみたが、それでも使い勝手が向上したような直感はなかった。
「どうしたんだよ、その方策」
 箸を押さえる方策が覚束無いわたくしとS・Kを確かめるや否や、真っ先に病態に気付いたのはN・Tだった。
「ちょっとね」
 N・Hがグルリと見回すようにやりとりに勤しんでいた面々に上手な苦笑をアイコンタクトと同時に見せる。
「グローブがNoだったね。いつか、買いに行こうか」
母屋からミットがボールを捕らえる音色を聞き付けるやいなや中庭まですっ飛んできたN・Hは、T・Mと引き渡してからざっと30分間S・Kの剛速球を受け切っていたので掌中はわたくしと比べても遜色ないほど赤みがかっていらっしゃる。
「それだけ目線を泳がせてどうした。もめごとでもしたのか」
「違うよ。なぜ誤解するのかな」
N・Hは呆れかえったように少なく溜め息を吐いた。
「身と全部目線をあわせないからだろう。みんなを引き連れて何か疾しいことでもしてきたんじゃないのか?」http://www.arcadis-fr.biz/